中小企業必見!賃上げをコスト増で終わらせないための対策と戦略
東京商工会議所と日本商工会議所の最新の調査によると、中小企業の8割以上がすでに賃上げを実施した、または実施する予定だということが分かりました。特に、従業員20人以下の小規模企業でも、賃上げへの意欲が前回調査より大きく高まっています。
物価高が続く中で、社員の生活を守り、人材を確保するために、賃上げは企業にとって避けて通れないテーマになりました。しかし、中小企業の経営者にとって、賃上げは「コスト増」というデメリットを伴う側面も無視できません。大切なのは、このコスト増を単なる負担で終わらせず、社員のモチベーションと生産性を同時に高める「未来への投資」に変えることです。この記事では、賃上げを経営戦略として成功させるために、中小企業の経営者の方が取り組むべき「2つの具体的な人事戦略」を、分かりやすく解説します。
なぜ中小企業は今「賃上げ」に踏み切るのか
中小企業が積極的に賃上げに踏み切る背景には、賃上げによる大きなメリット、すなわち深刻な人手不足への対策があります。
1. 人材の流出防止と確保の必要性(メリット)
大企業が積極的に賃上げを行う中で、中小企業が賃上げをしないと、優秀な社員がより良い待遇を求めて転職してしまうリスクが高まります。
- 採用市場での競争力:賃上げは、新しい人材を確保するための強力な武器になります。特に若手社員は、初任給の金額を重視する傾向があります。
- 社員の生活への配慮:物価高によって社員の生活費が増えているため、賃上げは社員の会社への信頼感を高めることにも繋がります。これは、中小企業の人材定着における重要なメリットです。
2. 「ただ上げるだけ」の賃上げの危険性(デメリット)
中小企業の8割以上が賃上げを実施する中で、大切なのは「どのように」賃上げを行うかです。ただ一律に給与を上げるだけでは、以下のような問題、つまりデメリットが起こる可能性があります。
- コストに見合う生産性の低下:給与は上がったが、社員の働きぶりが変わらず、会社経営を圧迫してしまうことがあります。これが中小企業にとって最も大きなデメリットです。
- 社員の不満の長期化:「賃上げは当たり前」と感じられ、翌年以降の賃上げがない場合に、かえって不満が募ってしまう場合があります。
賃上げを「未来への投資」に変える「2つの戦略」
賃上げをコストというデメリットではなく、社員のモチベーションと生産性を高めるための「未来への投資」というメリットに変えるために、中小企業がすぐに実行すべき「2つの具体的な戦略」をご紹介します。
戦略1:評価制度を見直し「頑張りが報われる」仕組みにする
賃上げに合わせて、社員の頑張りや成果が給与に反映されるような、公平な評価制度を整えましょう。これは、コスト増を上回る生産性の向上という対策に繋がります。
- 「能力と成果」に基づいた昇給基準:勤続年数に関係なく、社員の能力が上がった時や、具体的な成果を出した時に給与が上がる基準を明確にしましょう。これにより、社員の「もっと頑張ろう」という意欲を引き出せます。
- 昇給の「見える化」:賃上げの際に、「なぜ給与が上がったのか」という理由を、評価面談を通じて社員一人ひとりに具体的に説明しましょう。社員が納得感を持つことで、賃上げの効果が最大になります。
戦略2:会社全体で「生産性向上」の目標を共有する
賃上げの原資を生み出し続けるために、会社全体で生産性を高める意識を持つことが重要です。
- 「賃上げ」と「生産性向上」を結びつける教育:賃上げは、社員の努力によって会社の業績が改善した結果であることを伝え、「来年も賃上げを実現するために、皆で何をすべきか」という共通目標を設定しましょう。
- 業務効率化への投資:ITツールの導入や、ムダな会議の削減など、生産性を上げるための具体的な改善策を、現場の社員と一緒に考え、実行しましょう。社員の意見を取り入れることで、当事者意識が高まります。
まとめ:賃上げは制度の見直しとセットで成功する
この記事では、中小企業の賃上げ実施状況を踏まえ、賃上げをコストではなく投資に変えるための「2つの具体的な戦略」をお伝えしました。
公平な評価制度の見直しと生産性向上の目標設定は、賃上げによるメリットを最大化し、デメリットを最小限に抑えるための必須の対策です。社員の定着と会社の成長を両立させる仕組みを作りましょう。
「賃上げを適切に反映するための評価制度の設計は?」「生産性向上と連動した目標設定の具体的な方法は?」といった、賃上げを成功させるための人事制度設計や法的な整備は、私たち専門家にお任せください。私たち当事務所は、貴社の状況に合わせた、賃上げを未来への投資に変える人事・労務戦略の構築をサポートしています。
参考資料
東京商工会議所、日本商工会議所「2025年度の中小企業の賃上げに関する調査」(2025年11月20日公表)
この記事を書いた人

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大野輝雄社会保険労務士事務所 代表
株式会社アクションパートナーズ 代表取締役
社会保険労務士
一般社団法人 日本キャッシュフローコーチ協会 認定キャッシュフローコーチ
一般社団法人 採用定着支援協会 認定採用定着士
銀座コーチングスクール(GCS)認定プロフェッショナルコーチ
関西学院大学卒業、2007年に社会保険労務士として独立。大阪市内を中心に人事・労務についてのサポートやセミナー業務を行っている。同株式会社ならびに社労士事務所にて支援した企業は100社以上。大阪商工会議所、神戸商工会議所、堺商工会議所、高槻商工会議所等にてセミナー実績90回以上。
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