人への投資で採用を強化!中小企業が採るべき3つの戦略
財務省が発表した「法人企業統計調査」によると、2025年7~9月期の経常利益が4期連続で増加しました 。全産業の経常利益は、前年同期と比べて約2割も増えている状況です 。
この明るいニュースは、多くの中小企業の皆様にも業績改善の兆しがあることを示しているかもしれません。企業として利益が増えることは、大変喜ばしいことです。しかし、この利益を「単なる貯蓄」で終わらせず、人への投資として活用できるかが、今後の中小企業の成長と人手不足解消を左右します。特に、採用の競争力を強化するためには、賞与や賃上げを通じて社員に還元し、優秀な人材を確保し、長く定着させることが重要です。この記事では、増加した利益を効果的に人への投資に繋げ、中小企業の採用を強化するために取り組むべき「3つの具体的な戦略」を、分かりやすく解説します。
利益増加を「人への投資」に回すべき2つの理由
景気が回復し、経常利益が増えている今、中小企業が人への投資を強化すべき理由は、長期的な成長戦略に直結するからです。
1. 採用市場で確実に選ばれる企業になる
人への投資を積極的に行う姿勢は、求職者にとって非常に魅力的に映ります。これにより、中小企業の採用が強化されます。
- 求職者へのアピール:賞与の支給実績や賃上げへの積極的な姿勢を公開することで、「社員にしっかりと報いる会社である」というメッセージを伝えられます。
- 優秀な人材の獲得:大手企業が賃上げを進める中、中小企業も人への投資を怠ると、優秀な人材を他社に奪われてしまいます。利益を還元することで、採用の土俵に立てるのです。
2. 社員の「定着」と「生産性」を同時に高める
社員が「この会社で長く働きたい」と感じる要因は、給与だけでなく、将来への安心感や評価の公平性です。
- モチベーションの向上:利益が増えた分を賞与などに反映させることで、社員は自分の頑張りが会社の業績に繋がり、それが自分に返ってくることを実感できます。
- 離職の防止:人への投資によって待遇や福利厚生が改善されれば、給与への不満による離職を防ぎ、定着率を向上させられます。
中小企業が採用強化に繋げる「3つの具体的な戦略」
中小企業が、増加した利益を一時的な費用で終わらせず、採用の強化と企業の持続的な成長に繋げるために、今すぐ実行すべき「3つの具体的な戦略」をご紹介します。
1. 「利益連動型の賞与制度」を明確にする
賞与を会社の業績と連動させることで、社員全員が利益獲得に意欲的になる仕組みを作りましょう。これが、最も直接的な人への投資です。
- 算定ルールの公開:賞与の金額が、「経常利益の〇パーセント」や「部門の目標達成率」など、どのようなルールで決まるのかを社員に公開しましょう。
- 透明性の確保:ルールを明確にして、賞与の支給時にその根拠を説明することで、社員の納得感が高まります。
2. 「成長に応じた定期昇給」のルールを確立する
賞与は短期的な効果がありますが、賃上げ(定期昇給)は社員の長期的な定着と採用強化に不可欠な人への投資です。
- 評価制度との連動:社員のスキルアップや役割の変化を評価制度に組み込み、その評価に応じて昇給する仕組みを確立しましょう。
- 昇給の「見える化」:昇給するための具体的な基準(資格取得、役職登用など)を明確にすることで、社員が「何を頑張れば給与が上がるのか」を理解できるようになります。
3. 「非金銭的報酬」を充実させ働きやすさを向上させる
金銭的な報酬だけでなく、福利厚生や柔軟な働き方といった非金銭的な報酬の充実も、人への投資として重要です。
- 法定外福利厚生の導入:社員やその家族が利用できる医療サポート、健康診断の充実、育児・介護に関する休暇制度など、社員の安心感に繋がる制度を導入しましょう。
- 柔軟な働き方:リモートワークやフレックスタイム制度といった柔軟な働き方を認めることは、特に優秀な若手人材や、育児・介護との両立を望む人材を惹きつける強力な報酬になります。
まとめ:人への投資は「社員の定着」という未来へのリターン
この記事では、経常利益の増加という背景を踏まえ、中小企業が人への投資によって採用を強化し、優秀な人材を定着させるための「3つの具体的な戦略」をお伝えしました。
利益連動型の賞与制度、成長に応じた昇給ルール、そして非金銭的な報酬の充実は、中小企業が人手不足時代を乗り越え、持続的な成長を実現するための最も効果的な戦略です。
「賞与や昇給の算定ルールを就業規則にどう明記するか?」「評価制度の具体的な設計方法は?」といった、制度設計や法的な整備は、私たち専門家にお任せください。当事務所では、貴社の利益増加を社員の定着と採用強化に繋げ、企業の持続的な成長を実現するための人事・労務戦略の構築をサポートしています。
参考資料
財務省 法人企業統計調査 2025年7~9月期(2025年12月1日公表)
この記事を書いた人

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大野輝雄社会保険労務士事務所 代表
株式会社アクションパートナーズ 代表取締役
社会保険労務士
一般社団法人 日本キャッシュフローコーチ協会 認定キャッシュフローコーチ
一般社団法人 採用定着支援協会 認定採用定着士
銀座コーチングスクール(GCS)認定プロフェッショナルコーチ
関西学院大学卒業、2007年に社会保険労務士として独立。大阪市内を中心に人事・労務についてのサポートやセミナー業務を行っている。同株式会社ならびに社労士事務所にて支援した企業は100社以上。大阪商工会議所、神戸商工会議所、堺商工会議所、高槻商工会議所等にてセミナー実績90回以上。
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